前職の上司達とプライベートで飲みに行ったとき、「初めてコーチングを受けた話」をしたところ、この本を紹介された。良い、悪いというよりは話題に出したときに「有名だよね」という行で、である。
現職ではチーム体制やマネジメントに大して疑念を持っていたのだが、これを読んだところで疑いが確信に変わり、自分の信念には誤りがなく、起こしていた行動については誤りがあったことも良くわかった。
会社のためになることを個人・チームで全力に取り組む
大きな会社や勢いに乗っている会社には利己的な人物が多く集まる。利己的な人物が上層部にいる場合、その人間に思いに共感する人々が集まることになり(自然に集まるわけではなく、集めてしまう)、結果的に利己的な組織になりがちだと感じている。
そうではなく、会社のビジョンを明確にして、個人としてもチームとしても目標をそこに見据えて、利他的になろうというのが大きな方針としてある。そうではない人間がチームにいれば会話をして方向性を合わせていき、そうではない場合は排除をする。それがマネージャーとしての役割だ。日本はこれが非常に難しく(労働者を保護する部分が強いので)、中々直接的な実行が行えないのが正直なところではある。良い組織というのは皆が自然にこういう思いを持ち、行動している。
マネージャーの役割
敬意を持ち、信頼し、意見を吸い上げて意思決定を促す。決まらない場合は自らが決定するというのもマネージャーの役割である。これが出来ていないマネージャーというのが非常に多く、全て出来ていない人もいれば一部分しか出来ていない人もいる。
特に何か問題が起きたときは相手に最初から説明させることがありがちだ。マネージャーの表面的な役割というのは組織で問題が起きたときに責任を持つことだからだ。その時は相手に説明をさせて解決のための指示をしてしまいがちだ。時間が惜しいからだ。そうではなく、質問を通して答えを得るべき(本質に迫るべき)というのが重要である。相手に敬意を持ってコミュニケーションを取り、双方信頼を得ていれば皆が真に思っている意見が出るはずで、それになにか障害が起きている=問題が起きたときは相手に説明をさせるのではなく(これは表面上の問題に対する説明になりがちでバイアスがかかっているような状態)、フラットな状態で質問を続けて本質に迫っていくべきという話である。
ここに通じるのは「指示をしない」ということの重要性であり、上記を通して"任せた"メンバーが考え抜いたことは優れた結論に至る、ということだ。よく表面上で"任せた"ということがある。組織上で部下になっているメンバーに大して仕事を任せた、というのはただの委託であり、本質的な意味では任せられていないことが多い。一度任せたらそれで終わりではなく、継続的にコミュニケーションを取り、何か問題が起きたら指示をするのではなく、自分の経験と照らし合わせたストーリーを語ってあげることで自己解決を促すべきだ。
また、信頼はしているからこそ問題の重さに対して任せているメンバーに荷が重すぎると判断した場合は組織の組み換えを行うべきで、マネージャーは常に「任せているメンバー(自分が敬意を持ち、信頼している)で解決可能なのか?」を考えるべきだ。
自己開示の重要性
信頼を得るためには自己開示が大事だ。ミーティングでは自ら身の上話(こんなことがあった、こんなことを考えている、など)を切り出すべきだ。専らどうでもいい話というのはすべきではなく、ある程度意味を持たせられる雑談をすべきだ。例えば「車を買った。こういう部分に魅力を感じて、この値段だから価値に見合ってると思って買った」など。雑談を通して人間性が見えてくる。どうでもいい雑談は「最近寒くて風邪ひきそうだよ、体調管理はしっかりしたいよね」など人柄は一切見えない、ごくごく当たり前の会話である。こんなのはアイスブレイクにもならない。
自己開示を通して相互理解を進め、お互いの価値観を一致させる(理解を示す)ことで会社の目標、チームの目標を達成させることがうまくいく。本ではアメリカ的価値観も多く、家族同士の付き合いというのも含まれていたが、これは日本では難しいだろう。個人的に食事やお酒を通して、「友人の友人」と仲良くなる、とかが良いかもしれない。
昇進とは押し出されるべき
人材が流動的な業界でよくあるが、役職が確約された状態での入社だ。最初から部長、課長などで入社してくる。これは肌感で「最悪の中途入社」だと思っていたが、やはりそうだった。リーダーは行動でその立場を勝ち取らないといけない。与えられた立場というのは反感を買いやすい。事情は分かるが、あくまでフラットな状態で入社をさせ、周りのメンバーからの意見を吸い上げて「この人なら付いていきたい」と思わせるのが先である。上層部が決めたリーダーなど意味がない。
日本の「360度評価」の意味の無さ
少し前に流行った360度評価というものがある。一般的な評価制度は、部下を上司が評価するというものだったが、その逆パターンでの評価だ。また、同僚からの評価というのも含まれる。
そもそも日本の評価制度(もしかすると海外も同様かもしれないが)は形骸的なものが非常に多く、浸透していないビジョンに照らし合わせての達成度であったり、利己的な考えを推奨するような目標設定になることが多い。
その中で同僚や部下からの評価を得ようとしたとき、「どのように評価すれば良いか?」の答えは「あなたが普段、思っていること書いてください」となる。これは日本では絶対に上手くいかない。忖度が生まれる。とにかく日本は間を取った評価が多い。アンケートを取ったとき、5段階にすると3にする人がとても多い。意見に責任を持ちたくないからだ。
本書では「職務でめざましい業績を挙げた」「同僚と効果的に協力し、所属チーム内でのメンバーの協力を促した」など、YES or NO で答えられるものになっている。同僚からの評価はこのようにすべきだし、そうすることでその人物の本当の評価が見えてくる。
本書を読み通して、現職を辞める決心がついてしまった。しかもその理由が仕事内容ではなく人事制度や上司の能力の低さというのだから悲しい。