読書感想文

時は来た。それだけだ。

行動経済学の使い方

以前より行動経済学というものが気になっており、新書で読みやすいだろうと思いこちらを。

行動経済学とは伝統的な経済学とは違い、人の意思決定はどのようなものに基づくのか、というものを考えるもので、簡単なもので言えば月曜日の燃えるゴミを忘れずに出す為に、毎週アラームを設定するというのもコミットメントを利用した行為となり、行動経済学に基づいたものだ。

この本の中では具体的なケースにも触れて使い方を解説しており、スケジュールを先延ばしにしてしまうような現在バイアスの対策には細かいゴール設定をしたり、前述のコミットメントを利用することが効果的であるとしている。

このように人の意思決定に何かしらを干渉させることで良い方向に向かわせる事ができる。リチャード・セイラーはこれをナッジと呼び、「選択を禁じることも、経済的なインセンティブを大きく変えることもなく、人々の行動を予測可能な形で変える選択アーキテクチャーのあらゆる要素を意味する」と定義している。

このナッジの決定には様々な手法があり、それについても触れている。例えば仕事の中で誰かに何かを伝える時、より分かりやすく効果的に伝える為にはどうすればいいか?を良く考えるが、それは伝えた先に何か行動を起こして欲しいからだ。それを言語化したのがナッジの手法だと感じた。

話は飛ぶが、低~中程度の賃金水準の人間がそこから脱出し辛いことについても現在バイアスが原因なのでは、という説にも触れられていた。これにはかなり思い当たるところがある。彼らは自身の賃金の水準の低さを理解しているが、現在バイアスによる先延ばし行為で、失業保険だったり一定の貯蓄で楽しめる "今" を過ごしてしまい、結局就職活動をせずに簡単に就ける低賃金の職に戻ってしまう。最近の若い人々(Z世代)がタイパを気にして仕事にフルコミットせずプライベートを楽しむ方に重きをおいている、というのもこれで説明がつくのではないだろうか。

この他、生活や仕事で役立つ細かなテクニックが数多く紹介されていた。いわゆる、「要領の良い人」というのは行動経済学を無意識の内に上手く使っている。逆に、そうではない人は全く使えてないのである。周りの仕事仲間で、「こいつはどうにも要領が悪いんだよな」という人がいたら、この本を渡してみよう。