読書感想文

時は来た。それだけだ。

信頼の原則

仕事における人間関係において「信頼」は非常に重要な要素であり、特に上司・部下の関係で自分が上司の立場となればより一層重要度が増す。部下に仕事の指示をする場合、少なからず信頼をしなければならないからだ。危うくもあり、強固なものである「信頼」がどういうものなのかを例を交えて解説している。

通して読んでみて、序盤(P.25)に解説された3つの条件というものが全てだと感じた。

  1. 人格
    人格とは、信頼する相手があなたの利益を自分のことのように大切にしてくれること。

  2. 能力
    能力とは、信頼する相手があなたの利益を最大限に実現するための知性・能力・教育を身に着けていること。

  3. 権限
    権限とは、信頼する相手が約束を守れるだけの権限を委譲されていること。

この3つの条件どれか1つでも欠けていれば信頼をしてはいけない。思い返してみると、「裏切られた」だとか、「期待外れだった」と感じる人間は確かにこの3つの内どれかが欠けている。

自分が部下の立場である場合、自分の利益=給料もしくはキャリアそのものであるが、昇給させる努力もせず、権限もなく、ましてはキャリアの提示も出来ない人間が上司についた場合は大変なことになってしまう。(2、3が無い)

非常に有能とされている上司が就いた場合でも、その上司が保身に走ってしまえば立場が危うくなることもあるだろう(1が無い)。

 

また、自らがリーダーである時に心がけることについても触れられている。これは管理職研修であったり、世の中で多く語られている要素だらけであった為、今更振り返ってどうこうということは無かった。既に心構えとしても、行動としても実行できている内容が殆どだった。例えば以下のようなものである。

  • 言動を一致させる
  • 目標を示し、浸透させる
  • 事実を伝える
  • 謙虚さを忘れない
  • 交渉とはギヴ・アンド・テイクである

先日読んだ「失敗の本質」でも近しいことが語られており、かつ深いためにここでは割愛する。

 

唯一、「これは」と思ったのはコミュニケーションの重要性について語られている箇所(P104~)で、情報に関してチームを信頼するということだった。つまり、「情報の公開」をしないことに信頼を得られないということで、これは確かにその通りだと感じる。

肩書を背負って中途入社してくる人間がいるとする。その人間は、やれ「大企業で部長をやっていた人だ」だの、「業界では有名な人間だ」だのと語られる。蓋を開けてみれば何をやっているか分からず、結果もでず(見えず)、気付けば組織内に悪影響だけ残して去っている。この背景には、周囲から疑いの目で見られて協力体制を構築できず、持っている能力(無いかもしれないが)を発揮できないということがあった。このような話は大なり小なり多くの企業で起こっていることだと思う。

この彼/彼女が今自分が置かれている状況がどのようなもので、何をしているのかを透明性を念頭に発信することを心がけていれば、よほど酷い組織でない限り、周りはきっと助けてくれるはずだ。

信頼は引き継ぐ事ができない。組織が変われば必ずリセットされ、ゼロからスタートする。能力は引き継ぐことが出来るのだから、自分は「人格も能力もある」ということをアピールし、早期に権限を委譲してもらえるように立ち回り、信頼に足る人間だということを周囲にわかってもらう必要がある。今後、自分が所属する組織が変わった際にはこの点を十分に理解し、行動に移していきたい。